認定事実
前記争いのない事実等並びに証拠(甲13の1,15の1 〜 7,16,20,21, 23,4号事件乙4の1,同乙25の3,同乙29の1 〜 13,同乙35の1 〜5,1号事 件乙10の1,同乙28の3,同乙32の1 〜 13,同乙39の1 〜5,乙A35,36, 41,55,証人E,証人F,証人G,証人H,証人I,被告A本人)及び弁論の全趣旨 によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告Aの経歴・職務内容
ア被告A(大正14年9月17日生)の経歴は,以下のとおりである。
(ア) 昭和22年杵島地方事務所農地課
農地改革関係の職務に従事。
(イ) 昭和23年〜昭和25年同税務課
(ウ) 昭和26年唐津県税事務所間税課
徴税関係の職務に従事。
(エ) 昭和27年〜昭和32年会計課用度係
物品購入関係の職務に従事。
(オ) 昭和33年,昭和34年商工課企業係
(カ) 昭和35年,昭和36年商工観光課企業係
(キ) 昭和37年〜昭和39年工鉱課工業振興係長
(ク) 昭和40年,昭和41年工鉱課工業開発係長
企業誘致関係の職務に従事。
具体的には,佐賀東部の工場誘致(コカコーラ 社,ブリジストン,フランスベッド等,九) 州工業技術研究所,唐津火力発電所,伊万里 造船合板工場誘致等,県下の各種企業誘致の実働部隊として,用地買収等の業務に従事し ていた。
(ケ) 昭和41年〜昭和43年工鉱課課長補佐
(コ) 昭和44年,昭和45年工鉱通商課課長補佐
上記と同様に,課長補佐として企業誘致等の職 務に従事した。
(サ) 昭和46年秘書課長
知事の日常義務の補佐を行っていた。
(シ) 昭和47年,昭和48年漁港課長
唐津地方の港湾(漁港)整備の責任者
(ス) 昭和49年総務課長
(セ) 昭和50年経済部次長
(ソ) 昭和51年〜昭和55年総務部次長
(タ) 昭和55年〜昭和58年総務部長
各部の総括者としての職務に従事。
なお,上記 職務の外に知事の補佐役としても活動していた。
(チ) 昭和58年〜平成2年副知事
(ツ) 平成3年〜平成15年知事
イ被告Aは,昭和22年に就職して以来県職員として勤務し,平成3年に知事に 就任し,平成15年に退任するまで,知事時代を含め56年間県庁に勤務していたもので ある。
もっとも,被告Aは,工鉱課(工鉱通商課)等公共事業の多い部署の役職を歴 任しているものの,庶務係に配属されたことや庶務業務を担当したことはなく,複写機使 用料を含む需用費の管理をしたことはなかった。
ウなお,需用費の支出については,課長が最終的な決裁権者であるが,実質的に は庶務係(責任者は庶務係長)が行っていた。
そして,前記のとおり,課長が最終的な決裁権者であり,課長職を超える役職 の者が通常の業務において需用費の支出に関わることはなく,知事についても,同様に, 通常の業務において需用費の支出に関わることはなかった。
悪意の受益者
民法704条にいう悪意の受益者とは,「法律上の原因がないことを知りながら,利得した者」(最高裁判所昭和37年6月19日判決・集民61号251頁)であり,制限利息を超える利息又は損害金を受領していることについて知っていることが悪意の内容である。
利息制限法違反の高利の金利は,利息制限法所定利率を超えた部分が当然に元本に充当されること(最高裁判所昭和39年11月18日大法廷判決・民集18巻9号1868頁),そして,超過利息の元本充当により計算上元本が完済となったときは,債務者はその後に債務の不存在を知らないで支払った金額については不当利得金として返還を請求することができること(最高裁判所昭和43年11月13日大法廷判決・民集22巻12号2526頁)は確定した判例であり,実務上の処理とされてきた。利息制限法を超える高利の営業をする貸金業者において,不当利得金の取得について悪意であることは自明であり,大原則である。
利息制限法の上記原則に対して,法43条1項のみなし弁済の規定が設けられたのは,昭和58年における法の制定によるものである。同規定は,法17条,18条に定める記載事項を充たした各書面が交付され,しかも債務者が利息制限法違反の高金利を自ら容認して任意に支払った場合にのみ,有効な利息の支払と認めるとする規定である。しかるに,被控訴人は,リボルビング方式という特殊な契約であるとして,法17条,18条に定める要件の各書面の交付を欠く取引をしてきた。また,被控訴人は,法43条1項の趣旨を踏みにじって,超過利息の支払を契約上の義務であるとして,債務者にこれを請求して支払わせてきたもので,過払金の取得につき善意であるとの主張は到底認められない。
なお,みなし弁済が成立すると考えていたという法律上の錯誤は,悪意の要件事実には全く関係しない。
法43条1項は,貸金業者が主張立証する抗弁にすぎず,かかる抗弁に関する認識によって,請求原因に関する認識(悪意の有無)が左右されることはない。
加えて,知事は,その通常の業務内容からして,庁内の備品の配備状況につい て十分に認識できるものではなかった。
(2) いわゆるゼロ精算について
「ゼロ精算」とは,予算は,基本的に単年度精算のため,これを使い切れずに余 らせると,次年度の予算要求の際に厳しく査定されたりするため,予算を使い切ることで ある。
このような「ゼロ精算」の発想は,平成年代の初めころまでは,国家公務員,地 方公務員を含め,公務員全体のいわば常識的な考え方であり,それほど罪悪感を持つこと なく実行されていた。
とりわけ,補助金事業を含めた公共事業の場合は,予算が余り,補助金を返還す るような事態に至ると,翌年度以降,補助金自体が減額されることになり,予算編成に深 刻な影響を及ぼすため,より一層,「ゼロ精算」を徹底する必要があった。
したがって,県においても,長年,予算を使い切るゼロ精算が全庁的に行われ, いわば庁内の常識となっていたといえる。
なお,事業課において,複写機使用料や食糧費を含む需用費について,事業課以 外の部署よりも使い切れない予算が多く発生する理由は,事業本体の事業費に対して,需 用費を含む「事務費」が個別の積み上げ方式で予算化されるのではなく,類型的に「事業 費の●%」というように形式的に金額が決まるようにされていたからである。
そして,大きな金額の需用費が余るようになると,多少の努力をしたところで, これを費消することは困難となるから,本来は,費消していないのに,費消したかのよう に装う必要に迫られることになり,本件の複写機使用料のような形式で水増し支出を生む 背景となりやすく,一旦,水増し支出されると,庁内において,本来存在してはならない 金,すなわち「裏金」として管理せざるを得なくなるのである。
県においても,需用費支出の担当者である庶務係ではない一般職員ですら,事業 家においては,他の機関に予算の「預け金」があるとか,他課への予算の「融通」がある といううわさを聞いていた。
(3) 本件公金支出について
ア本件公金支出は,これが発覚した平成10年の時点から見て,少なくとも10 数年前から慣行的に行われてきたものであった。
イ本件調査報告書の「部局」の区分けによれば,「総務部」「企画局」「福祉保健 部・生活環境部」「商工労働部」「農林部」「水産局」「土木部」「教育委員会」「各種委員 会等」のすべての部局において,本件公金支出は行われていた。
そして,本件公金支出に より生じた水増し分の使途については,「部」「課」を超えた流用も行われていた。
ウ本件公金支出額は,前記争いのない事実等(2)イ記載のとおりであり,平成5 年度から平成9年度の通算で6億4433万6000円,単年度では,もっとも多い平成 7年度が2億2412万4000円であった。
なお,当時の県の予算の規模は5000億円くらいであった。
エ本件公金支出は,各課の庶務の担当者が,複写機リース会社の担当者に対し, 水増し分を含む請求額を指示して,その金額の請求書を出させ,それに応じた支出命令を 起案し,所定の手続を経て支出するという手法で行われていた。
本件公金支出の目的は,予算のゼロ精算ということにあった。
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